理事長の挨拶

理事長の挨拶

 ここ数年のこの「ご挨拶」でも繰り返し述べてまいりましたが、私たちは「言わば『物騒で、物憂い』と表現できる世界に住んでいる」という想いがありました。「ものさわがしく、何が起きるかわからない世界、何かに怯え、いのちの危険すら感じる世の中に身を晒して」いたと言えます。

 この予感はあたり、2011年3月11日の東日本大震災の複合大災害の被災体験から一層からだで感じられるようになりました。「アラブの春」や「欧州債務危機」が遠く感じられる人にとってもこの大震災は日本人の生活環境と生き方に強く影響を及ぼしています。2011年は生と死の意味と再生について考えさせられた一年でした。

 「むなしさ」や「さびしさ」、そして、「うつ」や「すてばち」感を訴えていた若者の中には、泥掻きや瓦礫撤去のヴォランテア活動を通して、自らのいのちの躍動を前向きに捕らえることができた人もおりました。また、これだけの大震災にありながら、暴動や略奪を起こすことなく、秩序を保てた高い精神性が驚きと賞賛をもって世界中から注目されました。日常生活における「絆」が再評価されました。

 しかし、被災地に住む人々は、自分たちがいつかは忘れられ、いつかは見捨てられるかもしれないという不安と恐怖にあります。この不安と恐怖に加え、不信と憎悪もまたすべての人が共有するものでもあります。現代人は人間の間に起こる対立や闘争の激化、天災や人災の想定外の勃発、社会的状況の混迷などで恨み、辛み、妬みの「呪い」の感情にさいなまれているからであります。

 これら感情を正直に誰かに伝え、自らが受け容れ、共に生きる力が発揮できる機会が求められます。自然科学、芸術文化、宗教など外の力に頼ることも大切ですが、カウンセリングの場での内側からの学びも回復と癒しと希望と「祝福」の生活への援助になります。

 ここに提供する「カウンセリング」のグループ学習を通して、互いに助け合い、励ましあい、労わり合いながら、個々人のこころとからだの内側に「繋がり」と「信頼」と「生きる力」を産み出し、この繋がりを人と人とに、そして、さらに広い世界へと拡げ、今此処での状況に生きる意味を見出し、結果として、幸せがもたらされることを祈念しております。

 平成24年度もまた、成長過程を辿れる多くの友人、知己、仲間の研究会へのご来会を心よりお待ちしております。

平成24年3月吉日

財団法人 日本カウンセリング・センター

理事長 平河内健治